
髙石みなみさん
理学部物質科学科4年生。「機能性物質学Ⅰ」の研究室に所属。
趣味の料理や半身浴で息抜きをしながら、研究とアルバイトに励む日々。
高校時代、物理や化学に面白さを感じ理系の道へ
中学までは、理科が好きとか数学が得意とか、そういうわけではなくて、むしろ苦手意識があったんです。だから、理系の道へ進むことは全く考えていませんでした。でも、高校に入ってからの物理や化学の授業がすごく面白くて。「身近な現象を数式で表せるなんて、すごい!」と感動したんですよね。そのこともあって、大学でも物理や化学を中心に勉強したいと思い、県立大の理学部物質科学科を選びました。

理学部では、1年生は一般教養や自然科学の基礎となる科目を中心に学びます。2年生になると、徐々に専門的な科目が増えてくるんですが、そのあたりから、自分が面白いと思うものや、興味を惹かれるものが少しずつ明確になっていった気がします。授業の専門性が増す分、苦戦する科目もありましたが、一人で抱え込まず、友人と一緒に勉強に励むことで、なんとか乗り越えることができました。その科目は今の研究の基礎となる学問なので、あの時諦めずに頑張って勉強して本当によかったです。
インターンシップで大きくなった進学への気持ち
3年生の夏休みには、半導体作成装置を作る会社のインターンシップに参加しました。半導体は「産業の米」とも呼ばれていて、いろいろな技術の根っこにある分野なので、ずっと興味があったんです。見えないところで技術の発展を支える半導体の存在があったからこそ、ここ数十年のデジタル家電やデータ通信の高速化などが加速したんですよね。

実際に工場の見学もさせてもらうなど、インターンシップはすごく楽しかったのですが、企業で研究や開発をされている方のお話を聞いて、「学部の学びだけでは、まだまだ足りていない。大学院であと2年間、専門的な勉強をしてから就職する方がいいのではないか」と、大学院へ進学する気持ちが強くなりました。研究を通して、自分から動いて何かを解決していく経験をもう少し積みたいと思ったんです。
大学院への進学を決意した「研究室体験」
最終的に大学院への進学を決意したのは、3年生後期の「研究室体験」の日でした。物質科学科では、4年生から所属する研究室を決めるため、この時期に気になる研究室を体験し、その内容をまとめて発表する機会があります。それまでは、どういう研究がしたいのかをはっきり決められずに悩んでいたのですが、研究室体験の実験で「光共振器」とはじめて出会い、「この研究をしてみたい!」と強く思ったんです。元々興味のあった半導体に近い分野ということもあり、今の研究室への所属を決めると同時に、大学院へ進学する意思を固めました。

光共振器とは、向かい合う鏡などの間に光を閉じ込め、反射して往復させることで特定のエネルギーを持つ光が存在しやすい状態を作ることができる機器のことです。光共振器には様々な種類があり、私の研究グループでは円や球状内に光が閉じ込められるWhispering Gallery Mode(WGM)共振器についての研究を行っています。私は、プラズモン(※1)が関与する発光増幅用の共振器のうち、最大となるマイクロスケールのものを作製することに挑戦しています。プラズモンには、特定の光が当たるナノスケールで光を閉じ込めて増強する効果があるのですが、取り扱いやすいマイクロスケールでも同様の光の増強効果を実現できないかと思って。開発した光共振器を、人工光合成といった光化学反応や太陽光を利用した光触媒などに応用できれば、エネルギー問題の改善にも役立てることができると思っています。
※1:金属中の自由電子の集団振動
学会発表で得たスキルと課題
4年生で研究室に所属してからは、県立大のシンポジウムや学会の研究会に積極的に参加しました。学会では、自分の研究成果をポスターにまとめて発表します。研究テーマや実験のデータをしっかりとまとめて、わかりやすく説明できるようにしておく必要があるので、一人で準備するのは結構苦労しましたが、おかげでプレゼンテーション能力や物事をやり抜く力も養うことができました。
学会は他の大学の方の発表を聞き、お互いの研究について議論できる場でもあるので、すごく刺激を受けます。参加することで「次の学会に向けて頑張ろう!」と、モチベーションも上がりますね。

今までは私が参加したのはすべて国内の学会で、発表も日本語でした。ただ、留学生の方から英語で説明を求められたときに、うまく説明できなかったんです。いつかは海外の学会にも参加してみたいんですし、国内の学会に参加する上でも必要だと思うので、研究内容だけでなく、英語力ももっと磨いていきたいですね。
新しい技術でエネルギー問題の解決に貢献したい
大学院に進学したら、研究室の先輩方のように論文を出したいです。学部で書く卒業論文はあくまでも学内向けなので、外へ向けて自分の研究成果を論文で発表できたらいいなと。今の研究テーマは卒業研究をまとめたら区切りがつくので、大学院では別のテーマに挑戦してみたいと先生に相談しているところです。具体的には、光共振器で特定のエネルギーを増幅させ、そこに電気を通すことで自在に動かし、いろいろなエネルギーを取り出すというような研究をしたいと考えています。これまでの研究を、より実用的なものにしていくイメージです。

将来的には、大学や大学院での研究を活かして、光半導体などの光技術に関連した企業に就職し、最先端の技術を生み出せるような人材になりたいと思っています。それを通じて、省エネルギー化の推進など、エネルギー問題の解決に貢献できたらうれしいです。