
三木涼音さん
看護学部看護学科の4年生。ワシントン大学での語学研修の経験や、マタニティピラティスのインストラクターの資格を在学中に取得。
将来の糧となる資格を取得しながら、自分の可能性を広げる道へ
私は4人兄弟の長女として育ちました。一番下の妹が生まれた時に私は小学校低学年だったので、うっすらと出産当時の記憶があります。担当してくれた助産師さんは、母親が安心してお産に臨むためのサポートだけではなく、家族である私や弟たちにも心のケアやサポートを丁寧にしてくれました。そんな素敵な助産師さんと出会えた原体験もあってか、将来は医療の分野に進みたいと考えるようになり、看護学部に進学しました。

一方で、さまざまな文化的背景や価値観を持つ人たちと接してみたいという思いから、実は海外で働くことへの憧れもあったんです。そのため、将来の進路が絞られてしまうのではという心配があって、看護学部への進学を迷った時期もあります。助産師の資格を取得したとしても、その仕事を一生続けていくのかどうか、今の時点では決められないと思っていて。

迷った末に看護学部に決めたきっかけは、病院だけが助産師の働くフィールドではないことを両親や高校の先生との会話から知ったことでした。助産師の中には、病院の実情やニーズを把握しているという利点を活かし、製薬会社や医療機器メーカーの営業職として働く方もいます。他にも、国際協力の分野で活動している方もいて、資格の活かし方はとても多様であると気づいたんです。県立大の看護学部では、助産師・看護師・保健師の3つの資格を4年間で取得できる上、英語や国際的なテーマについて学べる「グローバルリーダー教育プログラム(以下、GLEP)」を副専攻で受講できます。自分の視野を広げながら、将来の糧となる資格もしっかりと取得できる。家族の後押しに加え、県立大なら専門分野の枠を超えて色々な学びを吸収できそうという期待感もあり、看護学部への進学を決意しました。
自分の知らなかった働き方に触れた、授業での学び
大学進学前から、助産師の資格を活かして多様な働き方を模索したいと考えていましたが、その思いは進学後にさらに加速しました。将来どのように働くのか、明確な答えは出ていないものの、自分の知らなかった働き方を実践されている方と出会ったことで視野が一段と広がりました。

1年次に開講されていた「グローバルヘルス」という授業では、毎回さまざまな専門分野のプロフェッショナルに登壇いただき、それぞれの方が専門的に扱っている分野や仕事の話をしていただきました。登壇者の中には理学療法士の資格を活かしてJICAや青年海外協力隊で働く人もいて、国内だけが自分の働くフィールドではないと再確認できました。また、2年次にはがんセンターで遺伝カウンセラーとして働くドクターの方が大学にきてくれる機会があり、看護の知識を持つ遺伝カウンセラーの需要が高まっていることを教えていただき、資格に関する知識を強みにしながら別の職業に就くこともできるのだと学びました。
自ら飛び込んだ学びの場で、私らしい働き方を模索
他にも、自主的に参加したGLEPの授業では、4年次の授業を担当してくれた先生がアメリカでの臨床経験を持っていたことから、その時の話をしてくれました。また、3年次から働き方の選択肢をたくさん持っておきたいという想いはより強くなり、在学中にマタニティピラティスのインストラクターの資格も取得しました。幼い頃にバレエを習っていたこともあり、元々運動への関心もあったんです。妊婦さん向けにオンラインでヨガの教室を行なっている病院や、入院時にパーソナルヨガを受けられるオプションメニューを用意している助産所もあると知っていたので、運動のアドバイスができるマタニティピラティスの資格はきっと活きると思って。資格を取得したことを大学の先生に話したら「大学の授業で友達向けに一度やってみたら?」と、実践の場もつくっていただきました。

看護を専門としていても、看護師や助産師として働くことが全てではなく、その選択肢はとても多様であると、学部内外の授業や学びの場を通して気づくことができました。専門的な技能や知識の習得はもちろん、授業を通してたくさんの人生の先輩方と出会い、働き方の可能性がさらに広がった4年間だったと感じます。
一人ひとりと丁寧に向き合う助産師を目指して
コロナ禍の影響もありオンラインでの実習もありましたが、やはり現場での実習は学びが多かったです。特に、3年次の小児看護実習で言葉によるコミュニケーションが困難な疾患を持つ患者さんを受け持った経験は、自分を一つ成長させてくれたのではないかと思います。その患者さんは、身体的な疾患だけではなく精神の発達の遅滞もあり、ご両親もいろいろと不安を抱えているようでした。しかし、2週間じっくり向き合ってみると、言葉によるコミュニケーション以外に彼女なりの表現方法があると気づいたんです。絵本を読んであげた時や、チューブを使って栄養摂取をした前後の反応をよく観察することで、彼女の好きなものと嫌いなものへの反応の違いも見分けられるようになりました。

助産師として、一人ひとりと丁寧に向き合える人になりたいんです。私自身、いろんなものごとに関心を持てるという長所がある反面、一つのことに長いスパンで集中して全力を出しきれないという課題を感じることもありました。実習を通して、どんなに忙しくても患者さんと時間をかけて向き合い関係性を育む助産師さんの姿から学んだこともあって、これからは自分の課題も乗り越えていきたいと思っています。患者さん一人ひとりを深く理解するためには、その人の趣味や性格、家族関係といった背景から知ることが重要です。言葉で伝えられたことだけが患者さんの全てではありません。患者さんそれぞれの個性を理解し、じっくりと関係性を築けるような助産師を目指します。