
兵庫県立大学ならではの様々な学びのプログラムや取組を紹介する、『県大Menu』。今回のテーマは、文系学部から大学院への進学です。大学院への進学は理系学部の方にとっては珍しいことではありませんが、文系学部の方にとってはあまりイメージが湧かないかもしれません。そこで今回は、そもそも大学院でどのようなことをするのか、進学のメリット、兵庫県立大学ならではの進学パターンなどを紹介していきます。大学院への進学から広がる可能性を一緒に考えてみましょう。
そもそも、大学院ってどんなところ?
日本の大学院の一般的なカリキュラムは、修士課程と博士課程、または博士前期課程と博士後期課程に分かれています。ここでは修士課程・博士前期課程に絞ってお話します。

大学院生は学部生に比べて受講する授業数は少ないですが、特定の研究室に所属し、自分が探究したいテーマについてとことん研究することができます。調査や実験を自主的に計画して行い、最終的に論文としてまとめ上げるのが大学院です。研究をサポートする指導教員はもちろんいますが、教員から与えられた課題をこなすのではなく、自ら設定した課題に取り組むところが学部の通常の授業と大きく異なる点ですね。大学院での研究は試行錯誤の連続ですが、それが醍醐味でもあります。
「大学院に行きたい!」という気持ちは、どこから?
いろいろなパターンがあると思いますが、まずは研究テーマへの興味がきっかけとなるケース。多くの場合、学部でゼミに所属して卒業研究に取り組むようになってからではないかと思います。先行研究を読んだり、先生とディスカッションしたりする中で、自分の扱うテーマの面白さや奥深さに触れ、もっと研究したいという気持ちが強くなる学生が多いです。また、「文献を読む」「ディスカッションする」「調査・実験をする」「論文を書く」という一連の研究の営み自体が楽しいと感じる学生もいるように思います。探究し、何かが分かってくることは、それ自体ワクワクすることですよね。

社会人の方が学び直す、いわゆる「リスキリング」というパターンも、進学動機として挙げられますね。実社会で暮らすうちに湧いてきた疑問や関心と向き合うために、改めて学び直したい。働いていて自分に足りないと感じた専門性を身につけて、キャリアアップにつなげたい。職場で実績を積んできた分野について、学問的な視点でみつめてみたい。そういうものも立派な進学動機です。履修期間を延長できる長期履修制度や、平日の夜間や土日での講義の開講など、働きながらでも大学院に通うことができるような体制も充実しています。

大学院での研究活動を通して、何が得られるの?
まずは、何よりも専門性です。学部で得られる専門性よりもさらに深く、しっかりとした専門知識や技術を身につけることができます。研究者志望でない場合でも、時代の動向を見据えて、大学院修了後にどのようなキャリアを目指すのかをしっかりと考えておけば、その学びはきっと活きてきます。

また、兵庫県立大学には、社会ですぐ役に立つ職業人の養成を目的とした「専門職大学院」があり、そこに進学すれば、高度で専門的な実務能力を身につけることもできます。
例えば、社会科学研究科には、会計専門職専攻と経営専門職専攻の2つの専門職大学院があります。会計専門職専攻では、会計や監査に関する見識と職業倫理を育み、ケーススタディなどを通じて実務的な判断力も養うことができます。修了者には会計修士の学位が与えられ、会計実務の現場での即戦力として企業の経理部などでの活躍が期待されるほか、公認会計士試験の一部科目が免除になるという利点もあります。また、経営専門職専攻では、修了者には経営管理修士(MBA)やヘルスケア・マネジメント修士といった学位が授与されます。併設されている中小企業診断士登録養成課程の単位を取得すれば、中小企業診断士の資格も獲得でき、就職後の転職や昇進にも有利に働く材料となります。

緑環境景観マネジメント研究科では、兵庫県行政組織と連携し、高度専門職業人としての緑環境景観マネジメント技術者を育成しています。デザインやワークショップなど現場での豊富な演習に加え、事例研究や調査方法など実務に直結する理論を講義で修得できます。修得した履修科目によっては、自然再生士補や樹木医補、2級ビオトープ計画管理士、2級ビオトープ施工管理士などの認定や受験科目の一部免除を受けることも可能です。

いずれにせよ、現代の複雑な課題の解決をリードしていく上で、このような専門性は不可欠になってきています。
また、専門性だけでなく、専門分野を超えて社会で幅広く活かすことができる能力も身につきます。大学院ではディスカッションやプレゼンテーションの機会も多く、議論しながら課題を見つける力や、議論を重ねて理解を深めていくコミュニケーション能力、そしてデータ化・言語化した上で理論立てて説明する力などが鍛えられます。例えば、企業や組織の中で、事業計画を提案する際には、リサーチに基づく根拠と説得力のある提案内容が必要とされますが、このような大学院で培う、特定の分野に限定されないスキルは職場でも活かすことができるはずです。

大学院で得ることのできる人脈も、大きな魅力の一つです。大学院に通う方々は学ぶ意欲が強く、研究や実務能力の向上など目的意識が高いため、切磋琢磨する関係のなかで質の高いネットワークが築かれます。大学院時代に学友だった縁で一緒に事業を立ち上げた、ということも起こりえます。また、異なる分野の学問・研究を進めてきた学生や研究者との交流のなかで多様な価値観や考え方に触れることもできるはずです。

文系学部の学生が、兵庫県立大学の大学院に進学するパターンって?
2021年4月に兵庫県立大学の大学院は再編され、現在は9の研究科へ門戸が開かれており、大きくは2つの進学のパターンがあります。
○学部での研究をさらに探究。所属学部の上の研究科への進学
文系・文理融合系の学部である国際商経学部、社会情報科学部、環境人間学部には、それぞれその上位に社会科学研究科、情報科学研究科、環境人間学研究科があり、卒業研究の際に指導してくれた教員の研究室に進学するというパターンが一般的です。学部の間に取り組んだ研究を発展させ、さらに探求することができるので、研究の見通しや成果のめどもつけやすいです。

○学部での学びを土台に、新たな専門性を。独立研究科などへのクロス進学
環境人間学部から情報科学研究科へ進むなど、所属学部の上の研究科以外の研究科に進学し、学部とは別の専門性を得る選択肢もあります。兵庫県立大学には、直下の学部を持たない研究科である「独立研究科」が3つあり、地域資源マネジメント研究科、緑環境景観マネジメント研究科、減災復興政策研究科がそれに当たります。独立研究科は、複数の研究分野にまたがる学際的なテーマを対象にしているため、文系・理系のカテゴリーにとらわれずに学びの幅を広げながらユニークな研究を行うことができます。

大学院に進学するにあたって、気をつけておくことは?
大学院に進学するためには、入学試験を受ける必要があります。一般的な入学選抜は「出願書類」「筆記試験」「口述試験」を総合して行われることが多いです。学部生から社会人までが受けられる「一般選抜」や、小論文や面接や学部での成績で総合的に判断される「総合型選抜」、指導教員からの推薦をもらって受ける「推薦選抜」など、研究科によって選抜方法もさまざま。
出願から合格発表の期間は例年、推薦選抜の場合は5~6月頃、一般選抜は8~9月頃、後期試験としての各選抜は翌年1~2月に予定されています。就職活動期間後に試験日程が組まれていることもあるので、進学の条件や試験内容、スケジュールは早めにチェックしておくことをおすすめします。各研究科や入試については、兵庫県立大学のホームページで詳しく説明しています。そのような情報を参考にしながら、大学院への進学、そして大学院での研究を終えた後、社会で活躍する自分の姿もぜひ思い描いてみてください。