地域や海外での実践的な学びで、新たな視点が育まれる!

兵庫県立大学ならではの様々な学びのプログラムや取組を紹介する、『県大Menu』。今回のテーマは副専攻プログラムです。みなさんは、兵庫県立大学の「副専攻プログラム(*1)」をご存知ですか? 所属している学部の主専攻に限らず、学びの機会を広げるために設けられた教育課程です。これからの時代にとって大切な3つのプログラムが用意されていて、どれもフィールドワークや体験プログラム、課題解決の提案など主体的に学べるカリキュラムになっています。今回は、副専攻プログラムを履修している(した)3名の学生にお話を聞きました。
*1:副専攻プログラムには、地域創生人材教育プログラム(RREP)、グローバルリーダー教育プログラム(GLEP)、防災リーダー教育プログラムの3つがあります。詳細はこちらhttps://www.u-hyogo.ac.jp/campuslife/program/fukusenkou/
ゲスト:玉井柚帆さん(看護学部4年生/地域創生人材教育プログラム)、北川愛夏さん(環境人間学部3年生/グローバルリーダー教育プログラム)、仁木貴之さん(国際商経学部2年生/防災リーダー教育プログラム) / 聞き手:1460編集部
座学だけではなく、フィールドワークも充実
編集部:みなさん、今日はよろしくお願いいたします。まずは、それぞれのプログラムについて簡単にお話いただけますか?
玉井:私が受けたのは「地域創生人材教育プログラム(RREP)」です。地域で活躍する保健師になりたくて選びました。兵庫県の地域課題を見つけて、地域に実際に入りながら、まちの人々と協働して解決していく力を修得するプログラムです。
北川:小さな頃から海外での仕事に興味があって、私は「グローバルリーダー教育プログラム(GLEP)」を履修しました。実践英語はもちろん、国際的な教養などを身につけて、国際社会で主体的な役割を担う力を養うためのカリキュラムが用意されています。海外研修にも参加しました。
仁木:僕は「防災リーダー教育プログラム」を履修しています。災害発生の仕組み、防災・減災、災害が起きた時の対処や復興支援と、災害前から後までに必要な知識を学んでいて、フィールドワークへの参加も可能です。
編集部:ありがとうございます! それでは、それぞれのプログラムの内容や得られた学びについて詳しく伺っていきます。
地域の人たちと顔の見える関係を築き実践力が身につく。地域創生人材教育プログラム(RREP)とは?
編集部:玉井さんは、入学前から副専攻プログラムのことを知っていましたか?
玉井:副専攻について知ったのは、入学後のことです。入学前から保健師という職業に就きたいと考えていたので、RREPは進路に活かせると思って大学1~2年生の時に参加しました。

編集部:そもそも、保健師になりたいと思ったきっかけは?
玉井:母が保健師で、一番身近な職業だということが大きかったですね。母から仕事の話を聞くだけではなく、大学での看護の勉強を通して地域の人の健康を支えることの大切さを知って、さらに保健師になりたいと思うようになりました。
編集部:RREPではどんな授業を受けるのでしょうか?
玉井:1年次は基本的に座学で、兵庫県内の地域活性化の取り組みについて学んだり、インタビューの仕方やメモの取り方、地図の使い方など、フィールドワークで使う技術について勉強しました。2年次からは外に出て、1つの地域課題に対してプロジェクトを計画・実施・評価していきました。
編集部:地域では、具体的にどんな活動をするのでしょうか?
玉井:特に印象に残っている活動は、チームで行った「LIFE×WORK(ライフワーク)西脇」というインターンシップ付きツアーの企画・運営です。調査を進めていくうちに、兵庫県西脇市には大学がなく、若い人たちが市外に流出してしまい、仕事を外で見つけて戻ってこないので高齢化がどんどん進んでいるという状況だと分かりました。定住を促進するためには「職」の魅力を発信することが重要だと考えて、市内の6事業所での職場体験と地域の人との交流会を盛りこんだ3泊4日のツアーを企画しました。ちなみに、参加するプロジェクトはアンケートをもとに班分けされて、西脇市で活動した私たちのチーム「移住・定住交流推進班」は5人でした。
編集部:地域の人たちと交流しながら企画してみて、いかがでしたか?
玉井:市役所の方にはインタビューする移住者や協力企業を紹介してもらって、地域の方々にも積極的に助けていただき、西脇の魅力は地元の人の温かさだなぁ、と実感しました。企業との交渉や貸しスペースの確保、バスのチャーターなども自分たちで行ったので、コミュニケーションを取るのに緊張する場面もありましたが、授業で得た知識に留まらず、実践的に学ぶ機会になりました。
国内外でのフィールドワークで得る課題解決力。グローバルリーダー教育プログラム(GLEP)とは

編集部:北川さんはなぜ、GLEPに参加しようと思ったんですか?
北川:将来、海外で働きたい気持ちが強くて。小学生の頃、授業でアフリカの子ども達が将来の夢を語る映像を観たことがあったんです。貧しい国で暮らす人々の姿に衝撃を受けて、教育的支援をしたいと思ったことがきっかけで、海外で働くことに興味を持ちました。それ以来、小さな頃から英会話教室に通ったり、個人的にTOEICの勉強をしたり。国際的な勉強ができる高校に進学して、GLEPや海外ボランティアのプログラムがあることを知って県立大に入りました。入学後はラオスで教育支援を行う学生国際協力団体「CHISE(チーズ)」にも参加して、海外経験を積んできました。
編集部:小学生からの夢を叶えるために勉強を続けているとは、すばらしいですね! GLEPではネイティブスピーカーの先生の授業もあるそうですが、学外でも自主的に英語を使っているんですね。
北川:GLEPではアメリカへの海外研修もあって、とても刺激になりましたね。私は2020年春、ワシントン州のシアトルとオリンピアで研修を行いました。移動も合わせたら9日間のプログラムです。ずっと憧れていたアメリカへの渡航は本当に夢のような時間で……。現地の大学生と語学交流をしたり、アメリカの文化や慣習を体験し、「海外で働きたい」「もっと英語を話せるようになりたい」と志を新たにし、現在のモチベーションにもつながっています。

編集部:国内のフィールドワークもありますよね。
北川:はい。座学だけではなく、フィールドワークのプログラムは豊富でとてもいいなと思います。私は、新長田のNPO法人「神戸定住外国人支援センター(KFC)」が運営する介護施設「グループホーム ハナ」や、外国籍の子どもたちに勉強を教える「多文化子ども共育センター(Moi)」に何度か通って、利用者と交流し、在日外国人の方たちの生活や思いに触れることができました。
編集部:プログラムでの経験をとおして、どんな力が養われたと思いますか?
北川:フィールドワークに行くと自ら行動して考えることが多く、課題を見つける力、調べる力、解決に向けて動く力が身につきます。神戸のような海外の人が多く暮らすまちで、どうすればより住みやすい環境になるか。災害などのシーンではどのようなサポートが必要なのか。地域に根ざした具体的な課題を発掘する感度を養うことができ、GLEPでの経験は将来の夢に近づく確かな一歩になったと感じています。
防災のあり方を過去の事例から総合的に学ぶ。防災リーダー教育プログラムとは
編集部:防災リーダー教育プログラムを選んだ理由について、お聞かせください。
仁木:2018年に起きた大阪府北部地震がきっかけです。当時は大阪市の実家から近くの高校に通っていて、交通網の麻痺もあってようやく19時くらいに自宅に帰れましたが、家の中はグチャグチャで……。そこから地震や防災について学びたいと考えるようになりました。経済学を学びたい気持ちも昔から強かったので、災害後の経済政策について学ぶなら県立大の副専攻がいいと思ってこのプログラムに参加しました。阪神・淡路大震災があった神戸の大学ということも、理由としては大きかったです。
編集部:仁木さんは大学2年生で、既に1年間プログラムに参加していますね。どのような勉強をしていますか?
仁木:豪雨などの災害が起こるメカニズムについて学ぶこともありますが、多くの授業では過去の災害でどのくらいの規模と被害があったのか、災害時のメンタルヘルスはどう変化していったのか、災害に対処するにはどうすればいいのか、といったことを学んでいます。座学では災害の歴史の勉強が多い印象ですね。あとは、実践的な学びもあります。2~4年次の必修科目として「防災ゼミナール」という授業があって、尼崎市の高校と共同で地域の防災力向上のためのゲームを企画したり、防災食・非常食の実食体験も行ったりしました。

編集部:防災のノウハウについて学ぶだけではなく、被災者のメンタルケアなども含めて包括的に学ぶんですね。国際商経学部での主専攻と、防災についての副専攻。それぞれの学びが結びつく部分はありますか?
仁木:国際商経学部では公共経済学を専門にしている先生のゼミに参加していて、医療福祉の問題について学んでいます。たとえば、災害で子どものメンタルヘルスが損なわれたとしても、表に出にくくて教員などまわりの人が気づきにくいという問題があって。その対処法について、主専攻と副専攻の両方から考えている実感はあります。
編集部:プログラムに参加して得られたものは?
仁木:所属する学部や大学にとどまらない、人との交流です。県立大はキャンパスがいくつかに分かれているので、普段は他の学部の人と会うことがあまりありません。副専攻では他の学部の学生とも一緒に活動するので、他の分野で学ぶ人の考え方が知れてとても刺激になりました。

編集部:学外での交流はいかがでしょうか?
仁木:昨年末、南あわじ市の福良(ふくら)で開催された「福良津波防災フォーラム2021」という南海トラフ巨大地震への備えを促すイベントで、企画・運営を担当しました。巨大地震の際に兵庫県のなかで一番早く津波が来ると想定されているのが淡路島で、観光客の避難誘導の仕方を発表したり、避難誘導のためのポスターを展示したりしました。地元住民が約40名、南あわじ市の市長さんをはじめとする行政職員が約10名、県立大の学生23名が参加し、感染予防を実施しながら交流することができました。コロナ禍のため、対面で接することが難しい時期が続いていますが、だからこそ副専攻でこのような機会が得られたことに感謝しています。

副専攻は、未来の自分への投資
編集部:みなさんの将来の夢について伺いたいです。玉井さんは、こんな保健師になりたいという夢はありますか?
玉井:実は2022年4月から市役所で保健師として働く予定です。RREPの実体験を通して、地域の人と顔が見える関係でまちづくりをする楽しさを知りました。地域の人にとって身近な保健師になりたいです。

編集部:北川さんは、こういう職業に就きたいというビジョンはありますか?
北川:大学卒業後の進路は「国際」と「子ども」という2つの軸で考えていて、まずはカンボジアの支援をしている日本のインターナショナルスクールで働きたいと考えています。通信教育で勉強して、保育士の資格もすでに取りました。GLEPでは在日外国人の教育状況について学ぶ機会もあり、外国籍の子どもたちが大学まで進学するのは簡単ではないことを知りました。プリスクールと呼ばれる幼稚園部の教育環境に携わることで、在日外国人の方々の生きる選択肢を増やしていきたいです。それと、カンボジアの支援に継続して関わりたいとは思っていて、発展途上国に行って教育支援をするJICA(国際協力機構)などに中途採用で入りたいという大きな夢があります。

編集部:自分ができることから、着々と準備を進めているんですね! 仁木さんが思い描く将来像は?
仁木:地方公務員を目指していますが、市か県のどちらにするかは迷っています。今、興味を持っているのは道徳など教育方面のことで、専門的な学びだけではなく、他者と協力するうえで役立つ知識や経験を得ることが大切だと感じています。
編集部:若い世代の方々ならではの視点とアプローチで新しい社会が作られていくんだなぁ、とみなさんのお話を聞きながらしみじみ思いました。最後に、副専攻プログラムに興味を持っているみなさんにメッセージをお願いします。
玉井:副専攻は学部の主専攻と並行して学ぶので大変ですが、そのおかげで計画的に物事を進める能力が鍛えられます。看護学部の実習で参加できない時はメンバーに協力してもらって、書類整理などは自分で責任を持ってするようにしていました。きっと、就職後にも活きる経験です。入学したら、1つのことにとどまらずに挑戦することをおすすめします。
北川:GLEPで学ぶことで、なかなか海外に行けなくても日本でできることがたくさんあると気づけました。日本にいる海外の人やコミュニティの存在も知ることができて、視野が広がるプロジェクトが多いと感じます。コロナ禍でリアルな交流がしづらい今だからこそGLEPで新しい世界を見てほしいです。
仁木:災害に備えてみんなで学ぼう、取り組んでいこうという姿勢が、防災において一番大切なことです。僕は経済学を学んでいますが、環境人間学や工学、理学など、ほかの分野の人と専門知識を出し合って問題を解決する体験ができるのが、防災リーダー教育プログラムです。「防災」って少し堅苦しいイメージがあるかもしれません。でも、身構えずに飛び込んでみたら楽しいことが多いので、ぜひチャレンジしてみてください。
関連リンク
・兵庫県立大学/副専攻プログラムについて
https://www.u-hyogo.ac.jp/campuslife/program/fukusenkou/